線維柱帯切除術とは?
線維柱帯切除術は、緑内障に対する手術の一つで、房水(目の中の液体)の排出経路を新たに作ることで眼圧を下げる手術です。主に、点眼薬やレーザー治療では十分な効果が得られない場合や、眼圧が危険なレベルまで上昇している場合に選択されます。
どのような時にこの術式が選択されるか?
線維柱帯切除術は、以下のようなケースで選択されることが多いです:
薬物治療が効果的でない場合**: 点眼薬や内服薬で眼圧を十分にコントロールできない患者に対して手術が推奨されます。
進行した緑内障**: 視野が急速に悪化している場合、積極的な眼圧下降が必要であり、手術によって進行を遅らせる効果が期待されます。
レーザー治療の効果が限界に達した場合**: レーザー治療によって一時的に眼圧が下がっても、その効果が持続しない場合に手術が適用されます。
線維柱帯切除術の眼圧下降効果は?
線維柱帯切除術の眼圧下降効果は非常に高く、通常は術前の眼圧を**30~50%**程度下げることが可能です。例えば、術前に眼圧が30mmHgあった場合、手術後にはおよそ15~20mmHgにまで低下することが期待されます。この結果、視神経に対する圧力が減少し、視野の維持や病気の進行を抑えることが可能です。
この効果に関するエビデンスとして、以下の論文が参考になります:
- “Long-term outcomes of trabeculectomy with mitomycin C in open-angle glaucoma patients” (IOVS)
- “Trabeculectomy: Outcomes and Complications in Primary Open Angle Glaucoma” (NCBI)
長期的な効果と安定性
手術後の眼圧低下は多くの患者で長期間持続します。手術後3~5年にわたり安定した眼圧が維持されることが多いですが、時にフィルター閉塞や炎症が発生し、再手術や追加治療が必要になる場合もあります。
線維柱帯切除術のメリットとデメリット
線維柱帯切除術にはいくつかのメリットとデメリットがあります。
メリット
線維柱帯切除術の最大のメリットは、他の治療法が効かない場合でも高い眼圧下降効果が得られる点です。手術によって長期間にわたって眼圧を安定させ、緑内障の進行を遅らせることが期待されます。
デメリット
一方で、手術には感染症や低眼圧症といったリスクが伴います。特に手術後、フィルターが塞がる「フィルター閉塞」や、過度に眼圧が下がりすぎることで視力が低下することもあるため、定期的な経過観察が必要です。また、一部の患者では手術後に再び眼圧が上昇することがあり、その場合は再手術や追加治療が必要になることもあります。
まとめ
線維柱帯切除術は、進行した緑内障患者や他の治療法が効果を示さない場合に非常に有効な治療法です。眼圧を30~50%程度下げる効果が期待され、多くの患者で長期間安定した眼圧を維持できます。ただし、術後のリスクや再手術の可能性も考慮する必要があり、患者ごとに適切な治療法を医師と相談しながら選ぶことが重要です。